首都圏中学模試センターによると、今年の1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の中学受験者数は約4万3700人で、昨年よりも約500人増えました。2008年をピークに14年まで下がり続けた受験率も0.3ポイントアップして14.68%となり、2年連続で上昇しています。
『AERA with Kids 夏号』(朝日新聞出版)では、そんな中学受験の傾向を数々のデータとともに紹介しています。
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中学受験に詳しい安田教育研究所代表の安田理さんは、受験率の上昇のほか、受験生や保護者の学校選択も変化していると指摘します。
「大学合格実績や偏差値一辺倒の志望校選びではなくなりました。たとえば10以上偏差値の高い学校を蹴っても、わが子の将来につながるスキルが身につくならばと、教育の中身を吟味して学校を選ぶ親御さんもいます。昨今の親世代は海外へ赴任する機会も多く、英語の重要さを実感しており、グローバル教育が充実している学校を選ぶ傾向も見られます」
以下、今年の中学受験の傾向を表す3つのトピックスを紹介します。
(1)付属校の人気が高まりを見せる
「大学入試改革が言われていますが、現段階ではどう変わるか、わからないところも多いのが現実。そこで、確実に進学できる附属校を選ぶ受験生が増えています」と話すのは首都圏中学模試センター教務情報部長の北一成さん。
具体的には、早慶、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)のブランド大付属では、軒並み前年比100%越え。中でも慶應義塾湘南藤沢、慶應義塾普通部、青山学院、立教新座、法政第二の増加が顕著です。
青山学院は17年完成の新校舎に加えて、オリジナル教科書を使った英語教育、アクティブラーニングなどが評価されました。法政第二は、男子校から共学化したことで人気が上昇しました。横浜英和女学院は、今年から正式な青山学院大学の系属校になり、青山学院横浜英和と改名。条件をクリアすれば、青山学院大に進学できることから志願者が増加しました。18年には共学化する予定、人気が続きそうです。
ほかに、芝浦工業大は17年の豊洲への移転が好感を呼んで増加。成蹊、成城学園、東海大付属高輪台なども増やしています。
また、サピックス小学部教育情報センター本部長の広野雅明さんは次のように話します。
「大学が教育を刷新しており、大学自体の魅力が高まっているのも付属校人気の一因でしょう。また大学受験での勉強をガリガリするようりも、アカデミックな教育を余裕を持って受けさせたいという家庭が増えてきました」
(2)独自の取り組みを打ち出すニューウェーブ校の台頭がめざましい
昨今の傾向として、アクティブラーニングやグローバル教育を標榜する学校に注目が集まっています。15年に日本橋女学館から改称され、共学化した開智日本橋学園、同じく15年に戸板中学校から改称し、共学化した三田国際学園が人気を集めました。
適性検査型(PISA型、思考力型など)入試や英語入試など、従来の4科や2科の枠に収まらない入試も増えています。
さらに聖学院の「思考力テスト」はレゴを使って表現、かえつ有明の「難関思考力」はグループ討論、宝仙学園理数インターは日本語で放送した内容を聞き取る「リベラルアーツ入試」、中村は芸術、スポーツなど得意分野をアピールする「ポテンシャル入試」など、従来の形態にとらわれない入試も登場しています。
(3)男子校が人気
かつては共学が人気でしたが、最近は、男子、女子の別学の良さも見直されています。とくに、男子校への志願者が増えています。
今年男子校の中でもっとも志願者数を伸ばしたのが桐朋。前年まで志願者が減少していましたが、今年は約1100人集めて大幅増加に転じました。入試を1回から2回に増やしたこと、21世紀型教育へのシフトと新校舎建設がうまくマッチしました。御三家の武蔵も志願者増。母体の根津育英会武蔵学園が、海外大への進学を目指す中高生に向けて、英語で科学を学ぶ課外授業を実施。アカデミックな校風とともに、グローバル教育にいち早く対応したことが保護者の支持を得ました。今や難関校の一角にいる海城も好調です。
関西圏でも、今年は受験率が上昇。小学6年の児童数が減少したことを加味すると健闘したといえます。 ユーデックの情報企画部長・植田実さんは言います。
「午後の入試を導入する学校が増えたのも受験率が上がった一因です。初日も増加し、合格まで短期決戦になってきました。清風南海は入試日程を初日から撤退して2日目に軸足を移したことで大幅に増えました。大阪星光学院、四天王寺などとの併願を狙えるようになりました」
花園は、SGZ(スーパーグローバルZEN)コースを設置し、グローバル教育を打ち出すことで、大幅に志願者が増えました。
それぞれの学校で打ち出す教育内容が個性的になり、入試方法も多種多様になっている中学受験。親としては情報収集も大事になってくるといえそうです。
dot. 2016年7月8日(金)