中学受験Q&A

 

大学付属校編

Q1 そもそも「大学付属校」ってなに?
    大学名がついている学校は全部そうじゃないの?全員併設大学に進学できるわけじゃないの?
A1 大学付属校にもいろいろなタイプがあり、内部推薦進学率の違いが学校生活にも影響します
基本的には同じ学校法人の併設大学がある場合を「大学付属校」と呼びますが、大学と中高の設立母体や設立者の強いつながりがある場合なども、「内部推薦」などの面でその大学の付属校として扱われる場合もあります(京北/東洋大学、香蘭女学校・立教女学院/立教大学など)。一方、内部進学がほとんどなく、実質的にほぼ進学校という学校も(武蔵、フェリス女学院など)。とくに女子大付属校に目立つ動きとして、近年は大学付属校から進学校化する学校が増えています。校名に大学名がついていても、熱心に大学受験指導をし、生徒の多くが外部に進学する学校も珍しくありません。これらの学校は「半付属校」とも呼ばれます。また、「エスカレーター式で楽」などと思っていると、内部推薦に条件があったり、学部ごとに枠があって、希望学部に進めないということも。これらの推薦条件や内部推薦進学率の違いが、学校生活に大きく影響します。

 

Q2 大学付属校の良さってなに?
    内部進学以外のメリットは?
A2 併設大学の環境・施設・人的資源を利用できるのがメリット。内部進学ならゆとりある学校生活に
単純な「エスカレーター式」は減っていますが、それでも併設大学への進学がある程度保証されているのは大きなメリット。近年では、併設大学への内部進学被推薦権を確保しながら、他大学受験にもチャレンジできる学校が増えています。とくに内部推薦進学率が高い学校では、大学受験を気にしない「ゆとり」を生かし、クラブ活動や行事など、さまざまな学校生活に打ち込むことができます。授業も全教科バランス良く学べる学校が多いのも特徴。また、併設大学の教授が高校生への特別授業を行ったり、高校生が大学の授業を受講できたりという「高大連携」も。とくに大学と同じキャンパスの場合、施設を利用できるなどのメリットを享受できることが多いようです。

 

Q3 サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)ってなに?
A3 大学や科学館の研究者などが講師となるプログラムのこと
(独)科学技術振興機構による、科学技術に関する学習の支援事業。小・中・高校と、大学・公的研究機関・民間企業などが連携し、「研究者招聘講座」「教育連携講座」などで生徒の興味・関心や知的探究心を高める機会を充実させます。進学校でも高大連携的な授業を受けられるプログラムと言えるでしょう。

 

 

国立・公立校編

Q4 公立中高一貫校ってどんなところ?
    私立・国立・公立校の違いって?中等教育学校ってなに?
A4 私学で実践してきた中高一貫教育の良さを取り入れたのが公立中高一貫校。ただし、設置者・創立者の違いが校風にも表れています
12歳の進路選択肢を増やすため、1999年に制度化されたのが「中高一貫教育校」。私立校で実践されてきた6年間の継続的な教育の良さが認められ、公立でも実施できるようになったのです。私立校はこの制度とは関係なく、実質的な中高一貫教育を担っていましたが、近年は中高一貫教育校(併設型が多い)として、改めて認可を受ける学校が増えています。
国立校には、国立大学の附属校として、教員の養成と研修、学校教育の実践研究による指導法の開発などを行う役割があります。国立校の中にも、中等教育学校や、中学から高校に上がる段階で選抜がある学校、中学のみという学校もあります。
私立・国立・公立校の一番の違いは、その設立経緯にあります。私立校が教育者や団体の教育に対する思いや信念に基づいて誕生し、確固たる教育理念があるのに対して、国立・公立校は、国や自治体によって設置されたものです。ここが教育方針や校風の違いにも反映されているのです。

 

Q5 国立・公立校の入試科目・入試日ってどうなっているの?
    国立・公立校は併願できるの?通学区域が決まっているの?
A5 公立校は学力試験ではなく適性検査や面接などの組み合わせ。国立校は4科目以外の試験も。
公立校は学力試験を課すことができず、かわりに、筆記試験の「適性検査」や面接、作文、調査書、抽選などを組み合わせて選考します。国立校は2科・4科に加え、体育や音楽などを課す学校も。かつては抽選がありましたが、首都圏の09年入試で抽選制度を残すのは筑波大学附属駒場(ただし実施されず)のみ。国立・公立校の選抜日程は、同都県内で重なることが多く、東京や千葉では複数校の併願は不可。公立校と国立校は日程次第で併願可能。公立校には通学区域があり、他県の学校は受験できません。国立校は、各校の通学区域が決められていますが、近年は広がる傾向です。

 

Q6 国立・公立校の学費はどうなっているの?
A6 中学の授業料はかかりません。
中学は義務教育なので、入学金・授業料はかかりません。高校では、たとえば都立の場合、一般の都立高校と同程度の入学金・授業料(年額約12万円)がかかります。海外研修がある学校も多く、ふつうの公立校との違いは、こういったプラスαの部分に出てきます。国立校は寄付金がある場合が多いようです。

 

 

進学校&改革編

Q7 進学校って、そもそもどんな学校?
A7 中学受験では「大学付属校」の対語。教科教育に力を入れ大学進学とその先に向けた指導をする学校
一般に「進学校」という場合、生徒が大学進学をめざす学校、進学実績の良い学校をイメージすると思います。しかし中高一貫校の場合、大部分が大学進学を前提としたカリキュラムなので、「進学校」という言葉は「大学付属校」の対語として用いられています。一般的には主要5教科に力を入れていますが、大学進学をめざすだけではなく、全人教育を掲げたり、キャリア教育に力を入れるなど、さまざまな取り組みをしています。

 

Q8 高校募集のある学校とない学校、どっちがよい?
    高校入学生とクラスは一緒?
A8 それぞれにメリット・デメリットが。高校入学生とは混合しない場合も
高校募集のある学校は限られ、近年も吉祥女子、穎明館などが高校募集を停止(完全中高一貫校)。高校募集がある場合、高入生と混合クラスか別クラスか(途中から混合クラスなどの場合も)の違いが重要です。完全中高一貫校は、学校の一体感が強いことや、カリキュラムの組みやすさがメリットですが、やや中だるみしやすい面も。高校募集があれば高入生からの刺激がありますが、混合クラスだと一貫校ならではのカリキュラムが組みにくいのがデメリットです。

 

Q9 新校舎を建てると、どんな影響がある?
    建設中はプレハブ校舎? 寄付金が必要? 人気に影響は?
A9 学校の教育方針や改革度が表れる新校舎は、多くの受験生が注目!
せっかくなら充実した環境で学習したいもの。新校舎や新施設は、学校の人気を大きく左右します。新校舎建築には、カリキュラムの見直しなどの学校改革がつきもの。キレイさだけでなく、「施設・設備に教育方針がどう表れているか」「生徒のことをどう考えて設計しているか」に注目しましょう。また、新校舎の完成が数年先の場合、建設中はどうなるのか、特別な寄付金が必要なのかを調べておきましょう。もっとも、近年は建設中もプレハブを使わなくてよいような工夫をしたり、改めて寄付金を集めなかったりと、在校生の負担を減らすように努める学校が増えているようです。

 

Q10 新設校に入学すると何がおトク?
A10 「自分たちで学校を作っていく」という勢いがある!
中学新設、募集再開などの「新設校」は、伝統校と違って評価が定まっていない部分もありますが、時代のニーズを素早くキャッチして、「良いもの」をすぐ取り入れる姿勢が強いようです。第1期生はまさに先生方と一緒に「学校を作っていく」のです。校風についても同様、新設校を選んで入る好奇心旺盛で活動的な生徒が、学校に活気を与えていると言えるかもしれません。

 

 

学校選び編

Q11 男子校・女子校・共学校って、どう違うの?
     併学校って何? 共学校化する学校はなぜ多いの?
A11 のびのび育つ別学校 バランスの良い共学校
男子校・女子校の別学校は、異性の目を気にせず、のびのび過ごせるのがメリット。男女それぞれに合ったカリキュラムが作れるのもポイントです。ミッション校や伝統校が多く、多くが都心部にあります。一方、共学校は、性別を超えて幅広い考え方を知ることができます。多くは郊外にある新しい学校です。桐蔭学園など、授業は男女別、行事などのみ男女一緒という学校を、「併学校」と呼びます。近年は別学校から共学校になる学校が増えていて、市川などのように、共学校化を機に大きく飛躍した学校もあります。

 

Q12 ミッション校・仏教校・無宗教校でどう違うの?
     信者じゃないけど大丈夫?
A12 教育理念や学校生活、校風に違いが。信者でなくても大丈夫
全国の私立中学の約3分の1は宗教校です。歴史の古い学校も多く、日本の私学教育をリードしてきました。宗教的な教えを教育の柱や教育方針に盛り込んでいますが、実際の学校生活での宗教色の濃さは学校によって異なります。一般的にカトリック校は少人数で家庭的な学校が多く、プロテスタント校は生徒の自主性を重んじ、仏教校は「心の教育」を大切にしています。もちろん、どの場合も信者である必要はありません。一方、無宗教の学校では、学校の始祖による明確な「教育方針」「建学の精神」「教育理念」などが宗教校における宗教にあたり、学校の土台を支えています。

 

Q13 併設小の有無で雰囲気はどう違う?
     併設小の内進生と仲良くなれる?
A13 併設小があると、面倒見が良く雰囲気がおおらかな傾向が
暁星、雙葉、 慶應義塾中等部」「駒場東邦、桜蔭、渋谷教育学園幕張」……この2つのグループの違いは何でしょう。答えは、併設小の有無。前者が「あり」、後者が「なし」です。大雑把に言うと、併設小からの進学者(内進生)がいる学校は比較的面倒見が良く、おおらかなタイプの生徒が多いようです。併設小がない学校は、自分たちで開拓していく雰囲気。どの学校の先生に聞いても「内進生とはすぐに仲良くなれますよ」とのことです。

 

Q14 通学区域って決まってるの?
A14 私立は少数。国立大学附属校や公立一貫校は基本的にあります
私立には、基本的に学区域はありませんが、一部の学校のみ、通学時間に制限を設けている場合があります。国立大学附属校は、基本的に通学区域や通学時間が定められていますが、近年は緩和傾向。公立中高一貫校は基本的に設置自治体に居住していることが条件ですが、千代田区立九段のように、区内外で応募資格枠をわけている学校もあります。

 

Q15 寄付金・学債ってなに?
     特待生制度・奨学金制度ってなに?
A15 より良い教育環境のために協力したいお金。ほとんどの場合「任意」です
寄付金は文字どおり学校に「寄付」するお金。ほとんどが「任意」ですが、なるべく協力したいもの。「学債」は卒業後に返還を求めることができるお金です。寄付金の総額は10万円~20万円ぐらいが多いようです。成績上位生などを対象に、特待生制度がある学校も。中学入試で選抜を行う学校、1年ごとに更新する学校などさまざまです。奨学金制度は、学校独自の経済的サポート体制。経済的に学業を続けるのが困難になったとき、「給付(または免除)」「貸与」の形で利用できます。気になる学校は、制度を調べておきましょう。

 

 

入試編

Q16 「特待生制度」ってなに?
A16 成績優秀な生徒に、学費などを免除する制度です
特待生制度とは、「成績上位」「人物・学力ともに優秀」などの条件で、学費を免除する制度。在学中の成績で決まる学校もあれば、「特待生入試」を設けている学校もあります。免除内容は、「入学金のみ」から「中学3年間の校納金全額」までいろいろ。特待生資格も、毎年見直される場合と、数年間続く場合などがあります。これとは別に、家計急変時に授業料免除などの救済措置(奨学金制度)がある学校も。

 

Q17 偏差値ってなんのこと?どう見るの?
A17 「偏差値=学校の価値」ではありません
偏差値とは、特定の母集団のなかでの自分の位置を知る指標のことで、母集団での平均を50とします。当然、その学校の価値でもなければ、数値の変動も入試要項変更のためだったり、前年の人気の反動だったりと、学校の中身とは必ずしも連動しません。R4偏差値とは、センター模試(日能研)独自の学校偏差値表示方法です。

 

Q18 同じ学校を何度も受験できるの?
A18 多くの学校が複数回入試を実施。チャンスがたくさん!
いまや、1回入試の学校はごくわずかで、複数回入試を実施している学校が多数。なかには、複数回受験した受験生は、合否のボーダーライン上のときに優遇してくれたり、受験料の割引制度があったりする学校も。例年、多くの受験生は偏差値幅をもたせて、4~5校程度は受験しているようです。中学受験では、どの受験回で受けるのか、という併願作戦も重要になってきます。

 

Q19 コネや縁故ってあるの?両親が離婚していたら不利?
A19 中学入試は学力重視のフェアな入試。心配ありません
現在の中学入試は、入学試験の成績で合否が決まる、極めてフェアな選抜です。面接や調査書が必要な学校もありますが、あくまで参考程度とする場合がほとんどです。
また、両親の離婚や保護者の職業、出身校などが理由で不合格になることも、まずないといっていいでしょう。

 

Q20 調査書・報告書って必要なの?
A20 願書のみか“通知表のコピー”とする学校がほとんど
近年は、小学校の先生や保護者の負担を軽減するため、小学校の先生に記入してもらう「調査書・報告書」に代わり、「通知表のコピー」とする学校がほとんどです。通知表のコピーは、在籍したことを確認するためと、出席日数を見る程度。合否に関係することはまずありません。もちろん、「願書のみ」という学校も多くあります。

 

Q21 小5・小6からの準備では間に合わない?
A21 まだまだ間に合います。 決心したら、すぐに準備を!
小3ぐらいからの通塾が一般的ですが、小5・小6からの受験でも間に合います。とくに、学習習慣や基礎学力が身についているなら、これからでも大丈夫。そうでない場合は、まず進学塾に相談しましょう。ただし、学習だけでなく、学校選びなど、かなり忙しい日々になるかもしれません。

 

Q22 入試科目は何科目?
A22 首都圏では、国・数・社・理の4科目が主流です
首都圏私立では「4科目(国算社理)」か「2科目(国算)」か「2科・4科選択」が一般的。ただし、難関校のほとんどが4科目。近年は、4科目化への動きが顕著ですから、できるだけ4科目で学習を。国立大学附属校は4科目に加え実技科目がある学校も。公立中高一貫校は科目融合型の「適性検査」や「作文」など。関西では2科目(国算)や4科目(国算社理)に加え3科目(国算理)、または「3科・4科選択」も。

 

Q23 中学入試は、いつ行われるの?
A23 千葉・埼玉では1月から。東京・神奈川は2月1日から
地域によって中学入試の開始日は異なります。例年、首都圏では推薦・帰国生入試が12月ごろに行われ、寮のある学校の首都圏入試、茨城県が1月初旬から入試を開始。例年、埼玉県は1月10日、千葉県が1月20日、東京都・神奈川県では2月1日からいっせいにスタートします。関西では近畿2府4県(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県)が統一開始日方式をとっていて、2010年は1月16日が統一開始日に。

 

Q24 午後入試ってなに?
     同じ学校を何度も受けられるの?
A24 複数回入試はほとんどの学校で実施。1日に2校(2度)受けられる「午後入試」も増えています
いまや入試機会が1回なのは開成、麻布、桜蔭など、ごく一部のみ。「どの学校を受けるか」だけでなく「どの回で受けるか」も重要です。同じ学校を複数回受験すると、ボーダーライン上で考慮されることも。近年は「午後入試」も欠かせません。午前に1校受けたあとに受験できるので、早めの合格がねらえます。同じ学校でも、その午前入試に比べて難度が上がることもあるので注意。

 

Q25 面接・体育実技ってあるの?
A25 廃止、または簡略化する傾向に
中学入試では、面接を実施する学校は減少傾向です。実施しているのは、首都圏私学の約38%(10年入試)。面接には、(1)受験生本人のみ (2)受験生グループ (3)受験生と保護者がいっしょ (4)受験生と保護者が別々 という4つの形式があります。体育実技も減少傾向で、首都圏で実施しているのは数校程度です。

 

Q26 特進クラスってなに? 中学からコース制ってあるの?
     コース分けのメリットは? スライド合格ってなに?
A26 早くから将来を見すえた指導が受けられます
大学受験に向けて高い意識をもち、進路にそった指導が受けられるのが、コース制や選抜クラスのメリット。近年は高校だけでなく、中学の早い段階から「特進コース」「選抜クラス」「コース制」などを設置する動きが加速しています。大きく分けると、「HRクラス(の一部)が成績による選抜・習熟度別クラス(特進クラスなど)」「HRクラス自体が希望したコース別に分かれている(音楽コースなど)」「HRクラスは同じで、放課後の特別講習や補習が異なる」の3つがあるほか、それぞれ「選抜・コース分けの時期(入試・学年ごと・入れ替えの有無など)」「カリキュラムが異なるのか、進度が異なるのか」などの違いがあります。首都圏では東京都や埼玉県での実施が多く、関西は、多くの学校でコース別募集をしています。一方、コース制は早い時期から将来を決めてしまうことにもなりかねないと、あえて導入しない学校もあります。家庭の教育方針と照らし合わせて、わが子に合う学校を考えましょう。特別クラス入試がある場合、その合格点に届かなくても、一般入試に回してもらえる(一般入試の合格点があれば合格)制度、いわゆる「スライド合格」がある場合もあります。

 

Q27 どれくらいの小6生が中学受験をしているの?
A27 小6生の数は減少傾向なのに、受験者数は増加傾向!2009年は5人に1人が受験しました
首都圏の中学受験率は年々上がっていて、現在は小6卒業生数約30万人に対して約6万人、じつに5人に1人が中学受験をしている計算になります。これは公立中高一貫校も含めた数字で、ここ数年、公立中高一貫校が次々と開校して中学受験をする新たな層の掘り起こしになったという影響もありますが、むしろ私学の教育の良さが広まった結果だといえるでしょう。この受験率には地域差がありますが、中学受験は「ふつうのこと」になりつつあります。